〜 ミニリク小説 「年齢」 〜




「バーミリオンさんて、歳より上に見られることありませんか?」
 唐突な問いかけに、バーミリオンは眉間にしわを寄せて振り返った。視線の先には、悪ぶれた様子もなく笑顔を浮かべたフェズがいる。
「……なぜそう思う」
 と言いつつも、バーミリオンには彼女が質問してきた理由の検討がついていた。
 実際そう言われる事が(本当に)多く、数々の挙動を思い返して自分でも思うことがあったりする。そのうえエコーのせいでさらに老け込んだような気分になるのは気のせいだろうか。
 これまでエコーの面倒を見ていたのはフェズであったが、同性であるバーミリオンの方が行動を共にする時間が多くなり、必然的にその役目が回ってきているのである。
 と、そんな風に瞬時に考えをめぐらせたバーミリオンだったが、何だか無性に腹が立ってきた。こういう役回りを損だと思ったことはないが、疲れるのは確かだ。自分ではそんなに神経質でもなく頭が固いわけでもないと思っているが、他人からはそう見えるのかも知れない。だから余計歳より上に見えるのかも知れない。
 眉間にしわを寄せて真剣に考え込むバーミリオン、その横でフェズは小首をかしげていた。
「なぜって……歳だってそんなに違わないのに、エコーとは大違いでしっかりしてるなと思って」
「……それは、俺が老けて見えるということか」
「えっ、そうじゃないです。落ち着いてて、面倒見がいいってことですよ」
 フェズの言葉が全て裏返して聞こえるのは心が荒んでいるからだろうか。バーミリオンは軽く溜め息を吐いた。
「損な役回りだな」
 思いをそのまま言葉にして、バーミリオンは苦笑した。
 結局損だと思ってしまう。たまにはエコーのように気楽に生きてみたいものだと考えたりした。
「バーミリオンさんがそう思うなら、損なのかもしれませんけど……でも私は、そういう人が身近にいるとすごく安心します」
 ずっと兄姉が欲しいと思っていたから、とフェズは笑っていた。
 そういえば、と思い返す。きっと彼女も、これまで同じような立場にいたのだろう。
 ほんの少しでも気苦労をわかってくれる人間が傍にいると気付いて、バーミリオンの苛立った気持ちは、ほんのり和らいでいた。



 END



<ひとこと>
この後、エコーは意味もなくバーミリオンに睨まれたという。
ヤツは話中に登場しなくても、人様に迷惑をかけているんですねー(笑)。


この話の登場人物は、こちらの作品の住人です。→ 「 Ag 」


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