〜 ミニリク小説 「最強伝説」 〜




「だから、手っ取り早く決める方法は一つ。この場で勝負して、勝った方が最強ってこと。まあ、ひ弱なお前には端から勝ち目はないけどね」
 と、抜き身の剣の先を麗しの相棒に向けながら、余裕の表情でリヒトが挑発する。
「ほざいていられるのも今だけだ。今日こそその軽口を塞いでやる」
 と、対するヒュドールも臨戦態勢で応じ、相棒に対して放つとは思えぬほど冷徹な視線を向けている。

『魔術師って楽でいいよね』

 事の発端はリヒトのこの発言にある。戦場において前衛を任されるのは騎士、後方支援を行うのは魔術師である。接近戦に肉弾戦と修羅場を繰り広げる騎士に比べ、魔術師は無傷だし、その他諸々の待遇もいいし……と言いたかったらしい。
 それにカチンと来たヒュドールは、魔術師が特別視されるのは風習みたいなものだ。それだけ昔から魔術師は力があるのだから文句を言われる筋合いは全くない、と言い返した。
 そこから、やれこんな有名な武人がいただとか、高名な魔術師がいたとか、今では伝説となった人物の名を挙げる等、騎士と魔術師各々の名誉を競う、無意味だが幾分壮絶な舌戦が始まり、終いにはどちらが最強なのか、そして後世に名を残せるのか、今ここで決着を付けようという、何とも個人的な意地とプライドをかけた私闘へと発展してしまったのである。
「覚悟はいい? か弱き魔術師くん」
「貴様こそ、準備はできたのか? 地獄に落ちるためのな」
 黄金と青碧が睨み合い、凍てつくほどの険悪な緊張感が走る。


 そんな一触即発の空気の中、非常に困惑している人物がひとり。
「どうでもいいですが、人の部屋で喧嘩するの、やめてもらえませんか?」
 しかし二人には全く聞こえていないらしく、未だに舌戦を繰り広げている。
 大体、そんな下らないことで喧嘩しているようでは、どちらも伝説にはなれないだろうなあ、という思いを込めてイグネアは心底迷惑そうに深い溜め息を吐いたのだった。



 END



<ひとこと>
伝説というか、ただの喧嘩になってしまいました(汗)

この話の登場人物は、こちらの作品の住人です。→ 「 FIRE×BRAND 」


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