ビオレータと春の嵐
〜空の怒りは誰のもの?〜
春の間は穏やかな晴れの日が続くブルーメだが、その日の天気は少し変わっていた。 ビオレータはペルを連れ、昼近くに町から離れた高原へとピクニックに出かけた。ミュゲは昨夜遅くに帰って来たため、今日は一日お休みだ。 最近、ミュゲはよくエスタシオンに出かける。どうやら管理棟が忙しいらしく、一応季節管理職免許を持っているせいか、頻繁に借り出されているようだ。おかげでビオレータは一人で過ごす時間が増えている。ペルがいるから寂しくはないが。 それはさておき、ビオレータとペルは高原で日向ぼっこをしたり、駆け回ったりと、普段の疲れを癒すべく(実際はあまり疲れていないが)遊びまくっていた。持参したお弁当を食し、柔らかな草の上でゴロゴロする。午後の暖かな日差しが気持ちよい。恥じらいもなく大の字になって寝そべるビオレータのお腹の上で、小さなペルは丸くなってあくびを一つ。そよ風が薄紫の髪と黒いローブを柔らかく揺らしている。ああ、なんという至福の一時か。 しかし、それから少し経つと徐々に雲行きが怪しくなってきた。遠くに見えていた灰色の群雲は、風に流されてあっという間に高原の上空まで達して、ひとつふたつと冷たい雫が頬に落ちたかと思うと、帰りつく間にブルーメには土砂降りの雨が降り注いだ。 「きゃー、冷たいよー!」 勢い良く扉が開かれたと思ったら、けったいな声を張り上げてビオレータが飛び込んできた。足元にはペルがおり、小さな身体を一生懸命に振るって雨の雫を飛ばしていた。 ベッドの上で丸くなって寝ていた白猫ミュゲはのそりと起き上がり、あくびを一つしてから床に降り立った。床に乱雑に広がった本を軽やかに交わしながら扉に向かって歩いて行く。そして床に散らばった雫を見て、(猫なりに)顔をしかめた。 「ペル! そこでブルブルしたら駄目でしょう!」 ああ、もう! と文句を言いながらミュゲは一度寝室の方へと戻り、適当なタオルを咥えて戻ってきた。そのままひらりと宙を飛び、ペルの小さな身体にタオルをかぶせた。ペルは遊んでもらっていると勘違いしたのか、思いっきりタオルにじゃれついていた。ミュゲがシーッ! と牙を剥いて怒るが全く通用しなかった。これだから子供は困る……そう思って視線を上げると、ビオレータが物欲しそうに見下ろしていた。 「ミュゲくん、私もタオル欲しい」 見ればビオレータの黒いローブの裾からは、絶え間なく水が滴り落ちているではないか。ああ、もう! と言いながら、ミュゲはもう一度寝室へと走った。 着替えを済ませたビオレータは、窓辺にかじり付いて外を眺めていた。真っ黒な雲が空を覆い、激しい雨が降り続く。そのうちに雷鳴まで轟き始め、驚いて耳を塞ぐ。稲妻が黒い空を切り裂き、世界が光る。初めて見た稲妻に、ビオレータは歓喜の声を上げていた。 「こんなに濡れるまで、何で外になんかいたの?」 人の姿になったミュゲは、ビオレータの髪を拭きながらぶつぶつと文句を言っていた。足元では未だにペルがタオルにじゃれ付いている。その様を見てミュゲはまた溜め息を吐いた。濡れた床の掃除にローブの洗濯と、まさに主婦のような働きっぷりを終えたばかりなのに。 「黒い雲が! って思ったら、あっという間だったのよ。ねえミュゲくん、雨なんて珍しいね。しかも雷なんて初めて見た。エスタシオンで、誰か怒ってるのかな?」 ビオレータの言葉に、ミュゲはぎくりとして手を止めた。その雰囲気を何となく感じ取ったのか、ビオレータは不思議そうに振り返る。 「? どうしたの、ミュゲくん」 「……別に、何でもないよ」 妙に棒読みな感じが逆に怪しい。 「なに、なに? なんか隠してるでしょ!」 「隠してないってば」 「ふーん……」 と言って納得したように見せかけつつ、ビオレータは心の中である考えを閃いていた。確か、ミュゲは明日もエスタシオンに出張だと言っていた。こうなったら、こっそりついて行って真相を確かめてやる。 そうと決まったからには必ずや作戦を成功させなければ。ビオレータはその夜、いつもの愚鈍ぶりは何処へやら、といった感じで素早く一日を終わらせ、明日に備えて早々と眠りについたのだった。絶対に早起きしなければ! ◇ ◇ ◇ 予想通り、ミュゲは朝早くにエスタシオンへ発とうとしていた。ぐっすり眠っているビオレータを起こさないよう忍び足で家を出て、外で異界への扉を開こうとしていた。 「イトゥス・エト・レディトゥス、ムンド」 足元に描かれた魔法陣が光を放ち、白いローブの青年を呑み込んでゆく。その光が消えてしまう前に真っ黒な子猫が飛び込んだのだが、ミュゲは全く気付いていなかった。 エスタシオンに到着すると、ミュゲは真っ直ぐに管理棟を目指していた。その後を黒猫ビオレータは(時々あくびをしながら)こっそりついて行った。やはり早起きは苦手だ。さっきから眠くて仕方がない。しかし真相を暴くためには気合を入れなければ。誰に頼まれたわけでもないのに、ビオレータは妙な正義感を燃やしていた。 しかし早速困難に突き当たった。管理棟へはシュヴァルツが単独で入る事ができないのだ。ミュゲは難なくエントランスを抜け、すでに姿が見えなくなってしまった。どうしよう、どうしようとうろついていると、背後に人の気配を感じてビオレータはすくみ上がった。ああ、どうしよう。怒られてしまう。 「黒猫ちゃん、そんな所でなにしてるの?」 あれ、どこかで聞いたことがある声だ。そう思って振り向くと、秋色の瞳がじっとこちらを見ていた。栗色の髪はクルクルと巻かれ、まつげなんか驚くほど長い。まるでお人形のように綺麗なその人は、ヴァイスの証である真っ白なローブを着ていた。 「あ、あなたは……」 「ミュゲにくっ付いてきたのかしら。黒猫ちゃん?」 彼女の名前はアーチェロ。以前ここへ来た時に会った、ミュゲと同期の秋の魔法使いだ。その時は猛烈に忙しかったのか怒っていたが。 アーチェロは少し悪戯めいた微笑を浮かべながら屈みこみ、いきなりビオレータの頬を突いてきた。ビオレータが慌てふためく様が面白いらしく、彼女はしばらくの間そうして遊んでいた。 「えっと、その、あの……中に入りたいなって思ったんですけど……」 「あら、ミュゲと一緒に来たんじゃないの?」 「あのその……勝手について来たというか、もごもご」 「ふーん」 ビオレータは大いに怯んだ。兄弟子の後をこっそりつけるなんて、何という子かと怒られそうだ。身を縮こまらせて怯えていると、アーチェロがにっこり笑いかけてきた。 「わけを話してくれたら、私が中に連れて行ってあげるわ」 「えっ、いいんですか?」 「もちろんよ」 ビオレータにとって願ってもないチャンスだ。その誘惑に単純なビオレータが敵うはずもなく、ペラペラとここへ来た理由を話し始めた。 「ブルーメで雷なんて珍しいんです。だから『エスタシオンで誰かが怒ってるのかな』って言ったら、ミュゲくんの様子がすごくおかしくて……」 ビオレータの話に何か引っ掛かりを覚えたのか、アーチェロが渋い顔をしてうーんと唸った。ビオレータはわけが分からずに首を傾げていたが。 「心当たりはあるわね。でも、世の中には知らない方がいい事もあるのよ?」 「えーっ? そんなあ!」 ここまで来たら気になって気になって夜も眠れないだろう。どうかお願いしますと懇願しながら、ビオレータは子猫の爪で白いローブを引っかいた。 「……仕方ないわね、いらっしゃい」 「わーい!」 ひょいと抱え上げられ、ビオレータはアーチェロと共に管理棟へと入っていった。 いつもはミュゲに抱えられてばかりだが、たまに他の人に抱えられるとその違いがはっきりする。アーチェロの腕の中は柔らかくて、ミュゲ以上に暖かい。それにクルクルの髪からはすごくいい香りがするのだ。見上げれば、すぐそばに綺麗な顔がある。ビオレータは溜め息ばかり吐いていた。自分もこんな女性になりたいものだ。 「ミュゲはね、いまブルーメの季節管理を手伝っているのよ」 それは初耳だ。アーチェロの話によると、ブルーメの春の季節管理職が急病で休みをとっているらしく、それでミュゲに話が来たようだ。なるほど、それで最近は忙しく出かけているのかとビオレータは納得した。が、どうやらそれだけではないらしい。最初、代理は別の者に任されるはずだった。しかしヴァイスになりたての新人で、早速失敗をしてシステムに異常を作ってしまったのだという。そこでようやくミュゲへと話が来たわけだ。 「新人って必ず何かしらやらかしてくれるのよね。ホント、困るのよ」 身を持って知っているからだろうか、アーチェロは心底困った表情を浮かべて愚痴っていた。初めて会った時、たしかそういう理由で怒っていたなと思い出す。 しかし。ビオレータはふとある事実に気付いた。現在、ブルーメの春を管理しているのはミュゲだ。そしてその時期に珍しい雷が起こった。『誰かが怒っているのかな』――自らの発言を思い返し、ビオレータは一粒の汗を流した。いやいやまさか、そんなはずないよね? と自問自答しているうちに、だらだらと汗が流れてくる。 「ブルーメの管理室はここよ。こっそりのぞくから、静かにしててね」 片目をつぶってアーチェロがにっこり笑った。笑顔がいっそう美人ですね、と心で褒め称えつつも、ビオレータは汗をかきまくりだった。この部屋の奥は一体どんな波乱で満たされているのか。想像もできない。 アーチェロがドア横の小窓からこっそり顔をのぞかせている。ビオレータも彼女に抱えられつつぐっと“伸び”をして窓から室内をのぞき込んだ。 室内では数人のヴァイスたちが忙しなく動き回っていた。あっちへこっちへ書類を運んだり、真剣な表情で相談し合ったり。その喧騒を背後に、ミュゲは透明の半球体を横目でちらちらと気にしながら、コンピュータのモニタに向かっていた。 透明の半球体の中にはブルーメの模型が入っており、薄紅色の粒子がキラキラと輝きを放つ。この半球体にヴァイスが力を注ぐ事で、季節の管理が行われるるのだ。 球体内が春の証である薄紅に染まっているうちは正常だ。だが、システムに異常が出てからは時々緑色に変わってしまう。緑色は夏の証。この異常が続けば、ブルーメの四季に狂いが生じてしまう。ミュゲの努力のかいあってか、システムの異常は大分修復されつつある。このまま行けばあと数時間で回復しそうだが、今は一時の油断も許されない状況である。 ミュゲは神経を尖らせて半球体を気にかけつつ、モニタに流れる文字をチェックしていた。そこまでは順調だった。彼に他のヴァイスたちが詰め寄ってくるまでは。 「ミュゲさん、この書類のチェックお願いします!」 「こっちのモニタに変な文字が出てるんですけど、何でしょう?」 「この部分の入力はどのようにしたら最適ですか?」 「あ、ああああ、あの……おおおお、お茶をお入れしましたが、いいいい、いかがですかっ!」 画面に向かっていたミュゲは徐々に苛々を募らせていた。こんなチャンスは二度とない、とばかりに皆が詰め寄ってくるのはこれが初めてではない。最初は穏やかに対応していたのだが、それでも質問は休む間もなく繰り返され、ミュゲの怒りはついに頂点に達した。 バン! とデスクを強打してミュゲが立ち上がると、周囲がシンと静まり返った。誰もがぴたりと動きを止め息を呑む。白い背中が発する異様な怒気に反応してか、そばにある半球体の中が薄紅色から一転して薄黒く変化する。春色を漂わせていた球体は突然に稲妻を走らせ、ブルーメは再び雨模様になってしまった。 ミュゲは差し出されていた書類を手に取ってさっと瞳を通し、続いて別のモニタをのぞき込んでさっと瞳を通した。 「その書類、十二行目にミス発見。そっちのモニタの文字は変換ミス、そこの入力は春コードで。お茶は後でもらうから、そこに置いておいて」 全ての質問にきびきびと返答しつつ、最後に止めの言葉。 「ああ、君たちが邪魔するからせっかく上手く行ってたのに、また嵐になっちゃったじゃないか。ここは君たちの持ち場でしょ? 僕はあくまでも代理なんだから、少しは自分で考えてやろうね?」 ヴァイスたちは冷や汗を流して無言で頷いた。向けられた笑顔は限りなく眩いが、口調は穏やかながらも声色はまるで氷点下。額には恐るべき十字血管が浮き上がっていた事に、誰もがしっかり気付いていた……。 「ブルーメの嵐の原因は、たぶんあれね。最近、ミュゲはイラついてばかりなのよ。まあ、有能な人材に少しでも接したいと思う気持ちはわからなくないけど……」 部屋の様子をうかがいながら、アーチェロがぼそりと呟いた。ミュゲと共に仕事が出来る機会なんて、今後めぐって来るかどうか。そう思うと、彼に憧れる者たちは何かしら話をしたいのだろう。ブルーメの管理職たちだけでなく、管理棟にいる間は誰かしら余計な話を持ちかけて来る。おかげでミュゲは本来の仕事に集中できず、結果彼の苛立ちはブルーメに嵐をもたらした。季節管理職の心理状態は、その地域の気候に影響を及ぼすこともあるらしい。ヴァイスの力が強いほど、顕著に表れるそうだ。 ビオレータは複雑な気持ちを抱いた。ミュゲが怒る姿は(それとなく近い状態を目の当たりにした事もあるので)特に怖いとも思わないが、自分と共にブルーメに行っていなければ本来ならここが彼の職場なのだ。もしそうだったら、ヴァイスたちももっと落ち着いて仕事が出来るかも知れないのに、と考えた。 「やっぱり、みんなミュゲくんと一緒に仕事したいのかな……」 それは小さな呟きだったがアーチェロの耳にはしっかり届いたらしい。彼女は困ったように微笑むと、黒猫ビオレータの背を優しく撫でた。 「ミュゲと私と……あとクラベールはね、学校にいた頃からの仲間なの。だからあいつの事は良く知ってるわ。驚くかもしれないけれど、以前のミュゲはあんなに面倒見の良いやつじゃなかったのよ」 「ホントですかっ?!」 ええ、とアーチェロは頷いた。 「あいつが変わったのはね、子猫ちゃん、あなたのせいよ」 「ええっ?!」 ビオレータはびっくり仰天して、嘘くさいほどのオーバーアクションで驚いていた。いや、驚いていたのは事実だが。 「さてここで問題。季節管理職に就くことを嫌がっていたミュゲが、どうして今回に限って代理を引き受けたんだと思う?」 「えっ? えっと、その、あの……ひ、暇だったから?」 いきなり質問されてビオレータは大いに困惑しつつも、明らかに間違っているだろうと思われる解答をした。 「あなたが修行している国だからよ」 え、とビオレータは瞳を丸くした。 「ふふ、あなたのこと可愛くて仕方ないのね。ブルーメじゃなかったら、ミュゲは間違いなくすっぱりきっぱりバッサリ断っていたでしょうね」 あいつはそういう奴なのよ。学生の頃、それで何度苦い思いをしたか……と突然過去を思い出したらしく、アーチェロはまた愚痴っていたが。 「だから、あなたが気に病むことではないのよ。ミュゲは好きであなたの修行に付き合ってるんだから」 アーチェロに頬を突かれ、ビオレータはニャッ! と声を上げた。その声が踏み潰された猫のようにおかしく、またやたらとデカイ声だったため、室内にも届いてしまったらしい。何事かと振り返ったヴァイスたちに紛れて、ミュゲにもしっかり気付かれてしまったようだ。さっそく扉を開け、渋い表情でこちらを見ていた。 「はあい、ミュゲ。頑張ってる?」 アーチェロが愛想よく手を振るが、ミュゲの視線は彼女が抱えた黒い子猫に釘付けだ。 「……なにやってるの?」 「なにって、あなたの働きぶりを見学中」 「アーチェロ、君じゃなくて……ビオレータ?」 「ひいいいい! ごめんなさい〜」 ビオレータは情けない声を発し、アーチェロの胸に顔を埋めた。まともに顔が見られない。これは間違いなく怒られる。どんな雷が落ちるのか、想像するだけで恐ろしい。 「あなたの事が心配だったみたいよ? 可愛いじゃない。私もこんな可愛い子なら弟子に欲しいわ」 ひょいと抱えられたビオレータは、あっという間にミュゲに引き渡されてしまった。かちこちに固まったまま視線だけを上げてみると、薄青の瞳がじっと見下ろしていた。 はあ、とミュゲが重い溜め息をひとつ。 「アーチェロ」 「なに?」 「ひとつ言っておくけど、僕はビオレータの師匠じゃないよ」 「あら、そうだったの? ものすごーーーく面倒見がいいから、そうなんだと思ってたわ」 「……嫌味っぽい」 「誰のせいだと思ってるのよ」 「……執念深い」 「くっ! 殴ってやりたいわ!」 アーチェロはぐっと握り締めた拳を震わせていた。一体過去に何があったのか非常に気になる所だが、ビオレータは瞳を丸くして二人のやり取りを見ていた。あのミュゲと対等に渡り合うとは、さすがだ。ビオレータの心には、密かにアーチェロに対する尊敬の念が生まれていた。 「とにかく、心配してこんな所まで来てくれたんだから、邪険にしちゃダメよ」 「わかったよ」 「それなら良し。じゃあね、子猫ちゃん」 そう言ってビオレータの頭をひと撫でし、アーチェロは手を振ってから去って行った。 アーチェロが去ると、異様な静寂が漂った。抱えられている暖かさを押しのけ、寒々とした空気がビオレータを包む。何と言い訳をしたらいいのか。 「後をつけてきたの?」 「うっ……そうです」 「ふーん、君にしてはずいぶん早起きだ。頑張ったね」 「うっ……はい?」 今、褒められたような気がしたが。そう思って見上げると、ミュゲは苦笑していた。ヴァイスたちを黙らせた怒気はすっかり消えていた。 「どっちにしろ一人じゃ帰れないでしょ? もうすぐ仕事終わるから、それまで待ってる?」 「うん」 いつの間にか、氷点下の空気は春の暖かさを取り戻していた。微笑ましい師弟愛(ちょっと違う)が通路には溢れかえっていた。 が……。 「僕の後をこっそりつけるなんて、十年、いや二十年早いよ。帰ったら【百問問題集】のおしおきね」 「ええーっ! ごめんなさい、それだけは許してください!」 【百問問題集】とは、ミュゲ特製の鬼のように難しいテストである。その名の通り全百問。どんなに眠くても終わるまで寝かせてもらえないという、まさに最悪のおしおきなのだ。これで可愛がられているなんて到底思えない。アーチェロの言葉がまるで幻のようだ。 しかし悲痛な嘆きも虚しく、帰宅後、ビオレータは夜遅くまで百問の問題と闘うことになるのだった……。 ちなみに。 ビオレータの早起きは、この時が最初で最後だったらしい。 |
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