空色の花 後編






 夜の古城は静まり返っていた。当然人の気配はなく、あまりの静けさにほんの少し恐怖感を抱いた。
 城門は施錠されておらず、難なく敷地に入る事ができた。等間隔に設置された外灯と月明かりが庭園を明るく照らしている。
 アムはハビアの姿を探してしばし庭園内を歩いた。そうして彼を見つけたのは、庭園の中央にある噴水だった。淵に腰掛け、ハビアは空を見上げていた。闇夜の中でも鮮やかな蒼い瞳は、とても切なげに星を見つめていた。
「来てくれると思ってた」
 夜だというのに眩しい、正視できぬほど純粋な笑顔。その笑顔にどれだけ癒され、憧れたか。出会って間もないというのに、古くからの知人に向けるように与え続けられた青年の笑顔は、今夜はどこか遠く物悲しい。
「少し、歩こうか」
 そう言ってハビアは立ち上がり、手を差し伸べた。アムが戸惑っていると、ハビアは断りもせずに彼女の手を取り、歩き出した。
 純粋な笑顔と言動は年下のよう。けれど、自分の手を引いて先を歩く姿は年上のよう。
 本当の年齢なんて知らない。そんなものに関係なく、彼にとても惹かれていたのだと気付いた。こうして触れられることが、そばに居られることが、会いに来てくれたことが、待っていてくれたことが何よりも嬉しい。握られた手からその想いが伝わってしまうのではないかと思うほど、心臓の鼓動はうるさく鳴り響いていた。

 ハビアはずっと無言のまま庭園を通り抜けた。当然手をつないでいるアムもそれにつられて歩き、気付けば古城の前に立っていた。
 こんなに近寄ったのは初めてだ。いつもはどうせ入れないのだからと、外観を遠くから眺めているだけだった。この扉を開ければ、向こう側に閉じ込められた長い長い歴史に触れることもできるのだろうか。入口の扉を見上げながら、ふとそんな風に思う。
「中に入ってみようか」
 ふいにハビアが口にし、笑顔を向けてきた。アムはその笑顔を見上げながらも、それは無理だと返した。扉には鍵がかかっているはず。そう言葉にしようとして口を開きかけ、そのまま固まった。
 言う前に、ハビアが扉を開けていたのだ。鍵など始めからかけられていなかったと、そう思うしかないだろう。古く重厚な扉は、青年の細腕ひとつできしんだ音を立てて開かれてゆく。どこからそんな力が? そんな常識的な考えは、アムの脳裏の片隅から消えていた。この青年には、そうさせるだけの要素が備わっていたのだ。

 扉の向こうは異世界だった。今では決してお目にかかれない古びた調度品の数々は、コレクターなら喉から手が出るほどだろう。カビ臭に似た古い空気が停滞していて、お世辞にもいい香りだとは言えないが、不思議とアムにとっては嫌な匂いではなかった。
 吹き抜けの天井は高く、高く。目前には上階への階段が広がっており、重い赤のじゅうたんが敷かれていた。重厚な歴史を感じさせる空間が、懐古と衰退を物語る。
 薄暗い中、じゅうたんの上を一歩一歩進みながら、ハビアは天を仰いでいた。肌に感じるのはなんと懐かしい空気か。目を閉じれば、あの優しい笑顔が浮かんでくる。長く柔らかな空色の髪、紫水晶を思わせる瞳。この城が記憶しているのは、心優しく穏やかだった母の、ずっとずっと昔の姿。花のように可憐な少女の頃の姿だった。
 階段を一段登ったハビアは振り返り、宝石のような蒼い瞳がアムの姿をじっと見つめた。その視線があまりにも悲壮に満ちていて、アムは不安に駆られた。触れていなければ、彼はどこか遠くへ行ってしまうような、そんな気さえした。
「……僕の母さんはね、ずっとずっと昔、この城に住んでいたんだ」
 唐突な言葉に、アムの黒い瞳が見開かれた。
「どういうこと……? だって、この城に人が住んでいたのは、百年以上も昔の話よ?」
 ハビアの言葉の真意が掴めず、聞き返す。この城に人が住んでいたのは百年以上も昔。まだ国に名もなき時代のことだ。それがどういう意味を成すのか理解できなかった。困惑を素直に表情に浮かべるアムを見て、ハビアはさびしげに微笑んだ。
「嘘ではないよ。僕の母さんは、この城の王に養女として迎えられ、ほんのわずかだったけれど、確かにここで暮らしていた」
 語りながらハビアは階段を登り続け、気付けば階を上がり切っていた。

「僕は……人間ではないんだよ」

 言葉と同時。
 汚れ無き白――そう純白と呼ぶのが相応しい、美しく華麗な翼が、青年の背から現れていた。片翼だけでも青年の姿を覆い隠してしまうだろう、大きく広げられた翼からは白い羽根がいくつも舞い落ち、流されてアムの手元にもたどり着いた。
 目が離せなかった。いや、どうして目が離せようか。
 恋焦がれ、憧れた青年の本当の姿は、何よりも美しく何よりも儚い。現実味がないと思い続けていた存在は、背中のそれのおかげで自分とは――人間とは違う存在であると、はっきりとわからせてくれた。
 ハビアは地を蹴り、ふわりと飛んでアムの前に降り立った。まるで、風が流れただけのように、静寂をまとって。
「僕は【翼人】なんだ」
 かつてこのシャマイムが名もなき孤島だった頃。
 人間の他にもうひとつ、翼を持つ種が存在していた。
 空色の髪と純白の翼、人間では到底及ばぬ至高の美と自然界を自在に操る至高の力を誇る有翼種。
 父からは全ての翼人の証を受継ぎ、母からは優しく穏やかな心を受継いだ青年は、本当に最後の【翼人】となった。彼の他に翼を持つ者はもう存在しない。
 呆然と見上げているアムをよそに、ハビアは語り出す。
「僕が住んでいるのは、シャマイムではない。人間の世界と隣り合わせでありながらも、決して合い慣れぬ【楽園】と呼ばれる場所」

 楽園は今、滅びの道を辿っている。
 楽園と人間の住む世界は隣り合わせ。人間界が発展し自然が失われてゆけば、その代償が全て楽園に降りかかる。
 幼き頃よりそう教えられ続けたハビアは、人間の住む世界がどういうものなのか見たいと思った。父母を失って後、彼は度々シャマイムに足を運ぶようになったのだ。
 人間は高慢で好ましくないという父の話よりも、人間は優しくて穏やかという母の話が真実だと思えるようになったのは、シャマイムに住む人々と触れ合うようになってからだ。
 ハビアには人間達を滅ぼせるだけの力がある。彼が水や風を味方にしてしまえば、大地は崩壊し、嵐が起こり、水は枯れるだろう。もしも人間ひとりひとりが己のためだけに生きている存在だったら、彼は迷わずそうしていたかも知れない。
 けれどシャマイムは失われた自然を独自の方法で甦らせようと必死になっていた。方法が合っているのか間違っているのか、それは大した問題ではなかった。それに母が住んでいた古城をそのまま残してくれていた。それだけで、嬉しかった。
 楽園が滅ぶのは悲しい事だけれど、たった一人の翼人よりもたくさんの命を生かすべき。そのために楽園が滅ぶのは……犠牲は仕方がない事――そう強く思えるようになったのは、ひとりの女性と出会ってからだった。
「きみに初めて会った時、飛ばされてきた白い紙を手にしたでしょう?」
 文面など読まなくとも、紙面に溢れる想いは十分すぎるほどに伝わってきた。彼女はこれまで触れ合った誰よりも植物を愛し、自然を愛する心を持っていた。だから彼女に興味を持った。知りたいと思うようになった。
「本当はずっと黙っていようかと思っていた。けれど、そうも言っていられなくなったんだ」
 愛しいからこそずっと傍にいたいと願うのは、人間だろうが翼人だろうが自然なこと。もっと知りたい、これからも一緒にいたいと思うけれど、そうできない理由がハビアにはあった。
 その理由に、アムは言葉を詰まらせ、そして心は張り裂けそうなほど痛んだ。

 【楽園】には守護者が存在する。
 その守護者が、翼人という種を護るため、楽園と人間界をつなぐ道を塞いでしまうと言っているのだという。
 つまり――その道が閉ざされてしまったら、ハビアは二度とこの人間界には来られない。……もう二度と、会えなくなってしまうのだ。

 アムは俯いた。漆黒の瞳には涙が浮かんでいた。その涙は、別れを告げられた悲しさと、彼が人間ではないという事実が流させたものだった。
「あなたは、どこか私とは違うって……ずっと思っていた」
 ハビアは姿も心もあまりに綺麗過ぎて、自分とは違う、人間ではないと知って安堵感を覚えたのは嘘ではなかった。同じ人間だと言われたら、もう二度と立ち直れなくなりそうだった。こんな人間が存在したなら、神は卑怯だと詰ったかもしれない。
 言葉に詰まった。何か言わなければいけないのに、どうしても声が出ない。離れたくないと思うのに、引き止めるなんて不相応な気がして、余計に言葉が出なかった。
 俯いて肩を震わせるアムに触れようとして伸ばした手を、ハビアはぴたりと止めた。触れることにためらいを覚えた。今触れてしまったら、連れて行ってしまいたくなる。
「なぜだろう」
 つぶやかれた言葉に、アムは涙目を上げた。とても寂しげな蒼の眼差しが、じっとこちらを見つめていた。
「きみにも翼があったら良かったのにって……とても強く思ったよ」
 もし彼女にも翼があったなら、時間も境界もなく共に過ごせたのに。
 けれどそれは叶わぬこと。勝手な思いで彼女を掻き回してはいけない。

 夜は徐々に更け、時だけが無常にも過ぎてゆくのだった。





 天は白く明るい。だが太陽の姿はなく、また陽光も射さない。円形の土台を大地とした建物が所々で宙を漂うが、生物の気配が感じられない。生命の源【大樹】が青々と葉を茂らせているだけ。
 人の住む世界と隣り合わせでありながら、人の世界から切り離された白い世界。ここは、かつて天の支配者と言われた、翼を持つ種【翼人】の楽園。
 楽園へと戻ったハビアは、守護者【大樹】の幹に背もたれ、じっと空を眺めていた。楽園の空は明るいが、人間界のような趣がない。色も表情も変えることがない。青々と茂った葉々の隙間からちらちらと日が差し、青年を穏やかに照らしている。
「ねえ」

 ――なんだ?

 ハビアが声をかけると、男とも女とも、若者とも老人とも区別できぬ声が応えた。
「人間は……ここで生きてゆく事はできないのかな?」
 【大樹】は一度押し黙り、そして答える。

 ――それは無理だ。人間はこの地で生きる事に適さぬ種。それに翼がなければ不都合があろう。

 確かに、ここには大地が存在しないから、翼がなければ不自由だ。しかし……
「でも母さんは人間だったんでしょう?」
 ハビアの母・ティアイエルは、元は人間であった。父のおかげで空色の髪と純白の翼を手に入れたのだと、生前話してくれたのを覚えているが、人間であった母が暮らせたのなら、彼女も生きてゆけるのではないかと思った。

 ――ティアイエルは、私の【恵み】を口にした。そうしてこの地で生きてゆく資格を得たのだ。だが……

 その先を聞かずとも、ハビアには【大樹】の言いたいことがわかっていた。【大樹】の恵みは、人間界の発展の末に数十年前から実らなくなってしまったのだ。このままでは【大樹】も枯れ、やがてこの楽園は完全に消滅してしまう。そうならないために【大樹】は人間界と繋がる道を塞いでしまおうとしているのだ。それも全ては――最後の翼人のためだった。

 ――翼人と人間は所詮合い慣れぬのだ。

 【大樹】の言葉はどこか遠く。
 ハビアはアムの黒い瞳を思い出しながら、もう一度空を見上げた。











 あの夜から三日が経った。
 二人はあの日、三日後にまたここで会おうと約束をして別れていた。お互い言葉にはしなかったが、それまでに心の整理をつけておこうという気持ちがあった。
 アムは平常通り研究所で仕事をこなしていたが、ハビアとの約束の時間が近づいていたため、早めに切り上げて帰り支度をしているところだった。
 そこへ研究室の管理官がやってきて彼女に声をかけてきた。
「少し時間をいいかね?」
「はい、大丈夫ですが……」
 すでに支度は終えたし、約束の時間までまだ余裕がある。管理官は彼女に着いて来るよう一言、研究室を出て行った。

 管理官と共に向かったのは、ヒンメルの研究が行われている第三観察室だった。センサーが壊れてひと騒動起きたのが数日前のこと。それと同時、ハビアのおかげで植物達が甦ったのも記憶に新しい。
 あの純粋無垢な笑顔を思い浮かべて、アムは瞳に涙を浮かべた。これから、彼とはお別れをしなければならない。この人間の世界で遠くに行ってしまうのならば、また会うことも可能だろう。しかし彼はもう二度とこの世界にはやって来ないのだ。
「大丈夫かね?」
 涙を零し始めたアムを見て、管理官が困ったように言葉をかけて来た。アムは大慌てで頬を伝う涙を拭った。
「も、申し訳ありません……。た、大切な人が、これから遠くに行ってしまうので、つい感傷に浸ってしまいました……」
 すると管理官は、とても優しげな笑顔を向けてくれた。いつも難しい表情をしているからこそ、何だかとても新鮮だった。
「あの青年かね?」
「え……?」
 驚いて瞬くと、管理官はヒンメルが保管されている個室へと入ってゆき、そして再び戻ってきた。手には小さな鉢植えを持っており、植えられているのはまだ芽吹いたばかりのヒンメルだった。
「これを、彼に」
「えっ……し、しかしヒンメルはまだ開発段階で、この状態で外に出してしまったら枯れてしまって花なんか咲きませんよ?」
「彼ならば、科学の力などなくとも立派に花を咲かせてくれるだろうね。……花が咲いたら、見せに来てくれと伝えてくれたまえ」
 あの青年が何者か、管理官は問わなかった。けれど、彼の空色の髪はまるでヒンメルの大輪の花のようで。この花と彼が不思議な力で繋がっているような気がして。科学で証明できぬ、不可思議な出来事もたまにはいいのでは――管理官の心にはそんな思いが生まれていたのだった。
「ありがとうございます……!」
 管理官の心遣いに深く感謝し、アムは深々と頭を下げた。



 夕暮れ時の庭園は人気も少なく、噴水の水の音だけが穏やかに響いていた。オレンジ色に染まった景色は、別れの辛さをいっそう強くする。
 アムは約束の場所である噴水の淵に腰掛け、ハビアを待っていた。腕に抱えたヒンメルの鉢植えを見つめて、何度も溜め息を繰り返しながら。
 早く会いたいと思うものの、来てしまえば別れを言わなければならない。引き止めたら彼はこの世界に留まってくれるだろうか? とそんなことも考えた。けれど彼は人間ではない。この世界で生きてゆく事に、不都合もあるだろうから無理を強いてはいけない。
 いけないけれども……二度と会えないだなんて悲しい。これからもずっとそばにいたい。一緒に生きてゆきたい。それは願ってはいけないことなのだろうか、この想いは叶わぬものなのだろうか。それならば、なぜ神は彼とめぐり合わせたのだろうか。
 どこからともなく吹いてきた柔らかい風がアムの黒髪を揺らしていた。

「待った?」
 俯いていたアムに、限りなく優しい声で言葉がかけられる。顔を上げると、目前に茂った木の枝にハビアが座っていた。
 ハビアはにっこり微笑むと、木の枝から降り立った。風に乗った木の葉のように、軽やかに優雅に。ゆっくりと歩を進めてアムの前までやってくると、彼は地にひざまずき、そしてもう一度微笑んだ。
 その笑顔をもう見られないと思うだけで、自然と目頭が熱くなる。込み上げてくる涙を何とか抑え、アムは精一杯の笑顔で応えた。無理を言ってはいけない。彼が【楽園】に帰ると決めたのなら……それが彼の幸せなら。本当に大切だからこそ、願ってあげなければならないのだ。だから、最後は笑顔でさよならを言いたい。
「これ……」
 アムは腕に抱えていたヒンメルの鉢植えをハビアに手渡した。
「あなたなら、きっと立派な花を咲かせてくれるだろうって……私も、あなたが育てるのが相応しい花だと思うわ」
 ヒンメルの花は、そこに晴天の空が広がっているかのように青く、美しい。その色を見るたび、あなたを思い出すだろう。あなたという人がそばにいてくれた日を、夢のように思い返しながら。
「ありがとう。でも、僕一人では花を咲かせられないよ」
 意外な返答に、アムは瞬いた。あの日、彼は間違いなく枯れそうになっていたヒンメルを生き返らせたのに。彼のそばにいれば、ヒンメルも素晴らしい花をつけるに違いないはず。
「どうして……」
 するとハビアは立ち上がり、アムの手を取って彼女をも立ち上がらせた。
「きみと一緒に育てたいんだ。僕はきみがいたからこそ、あの時みんなを生き返らせることができた。きみの笑顔を失いたくなかったから」
「え……?」
「今度は、力を使わずにこの花を咲かせてあげたい。きみと一緒に」
「それって……」
 言葉の意味がわからずにアムが首を傾げると、ハビアは少し困り顔を浮かべ、小さく笑った。
「【大樹】には少し辛い決断をさせてしまったけれど……僕はこの世界で生きてゆこうと決めたんだ」
 聞き違いではない。ハビアははっきりと言った。この世界で生きてゆこうと。

 楽園に彼女を連れて行けないのならば、自分が人間の世界で生きてゆくしかない。長い時を過ごし、父母の思い出がたくさん残る楽園を去るのは寂しい。生まれた頃から見守ってくれていた【大樹】から離れるのは辛い。けれども、未来を見つめなければならない。思い出は心の中にも生き続けるのだから。
 そう決断したハビアの気持ちを【大樹】は理解してくれた。そして、楽園と人間界をつなぐ道は、最期の時――【大樹】が枯れて楽園が崩壊するその時まで、開いて置こうと言ってくれたのだ。
 それは全てハビアのため。やがて愛する者の死を看取り、人間の世界で居場所を失った時、帰る世界を残しておいてあげたいという、親心にも似た深い愛情だった。楽園最後の翼人は、【大樹】にとって最後の愛し子だから。

 ハビアはアムの手を握り、そして言った。
「ずっと一緒にいてくれる?」
 向けられた笑顔があまりにも眩しくて。思いつめていたものが涙となって一気に溢れた。どうしようもなく涙が止まらなかった。
 アムはしっかりと頷き、そして心の中で何度も何度も繰り返した。

 神様、このめぐり合わせに感謝します――。








 それから数年の後。
 植物学研究所は新種の植物【ヒンメル】の完成を正式に発表した。シャマイムの至る所に種が植えられ、時が来ると大地にはいっぱいの空が広がった。憂鬱な雨の日も晴天の空が心を晴れやかにし、ヒンメルは人々の癒しの花となった。

 しかし、その空色の花の陰にひとつの恋物語があったことは、きっと誰も知らない。





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